
設置公開<2010年7月23日>
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<脳出血の死亡率>塩分摂取だけでは説明できない - シバケン
2026/04/27 (Mon) 17:24:01
>「太り気味だから、ごはんをお茶碗半分にしているのに痩せない」「血圧が高いから塩分を控えるように家族に言われた」……こんな経験がある方、少なくないのではないでしょうか。実はそれ、日本人に合っていない健康法かもしれません。
>同じ人間であっても、外見や言語が違うように、人種によって「体質」も異なります。そして、体質が違えば、病気のなりやすさや発症のしかたも変わることがわかってきています。欧米人と同じ健康法を取り入れても意味がないどころか、逆効果ということさえあるのです。
>見落とされがちだった「体の人種差」の視点から、日本人が病気にならないための健康法を、徹底解説してロングセラーとなった『欧米人とはこんなに違った日本人の「体質」』が全面改訂されて『最新 欧米人とはこんなに違った日本人の「体質」』として新たに刊行されます。
>新型コロナの流行をはじめ、旧版刊行からのおよそ10年のあいだの医学・健康をめぐる新知見をも取り込んだ本書。今記事シリーズでは、この『最新 欧米人とはこんなに違った日本人の「体質」』から、とくに注目の話題をご紹介していきましょう。
>前回の記事でお伝えしたように、食生活の改善という環境要因の変化によって、大幅に減った病気の一つ、「脳出血」。その一方で、いまだ多くの患者や予備軍が認められるのが高血圧です。今回は、日本人の体質から見た高血圧を考えていきます。
<本1>
日本人の「体質」
>*本記事は、『最新 欧米人とはこんなに違った 日本人の「体質」』(ブルーバックス)を再構成・再編集したものです。
>日本人は「遺伝的に高血圧素因」があるのか
>前回の「食生活の変化で減った病気、増えた病気」の一つとして、脳出血による死亡率の低下を取り上げましたが、いまだ、血圧が高い人は多く、厚生労働省の「令和5年患者調査」によると、現在約1609万人が高血圧の治療を受けています。予備軍も合わせると全国で5500万人にのぼるという試算もあり、そうであれば、成人の2人に1人が高血圧ということになります。
>日本に高血圧の人が多いのには遺伝的素因の問題があります。両親ともに正常血圧の人が高血圧になる割合が5~10%であるところ、両親がそろって高血圧だと、子どもの2人に1人が高血圧になると言われています。
>ただ、現時点では、それ一つで血圧を高めるような決定的な遺伝子変異は見つかっておらず、 おそらくは複数の遺伝子と、生活習慣を含めた環境要因、そして環境要因が体に与える影響に関連する遺伝的素因が複雑に重なり合って血圧を上げたり、抑えたりしていると考えられています。
>2018年に公表された文献によれば、234もの遺伝子が血圧の調節にかかわっており、 そのうち5%以上が東アジア人と欧州系の人で異なる遺伝子でした。
>さて、遺伝的素因として近年話題になったのが「食塩感受性」です。簡単に言うと、食塩感受性が高い人は、同じ量の食塩を摂取した場合に血圧が上がりやすいのです。個人差の他に人種差があり、アフリカ系、日本人を含むアジア系、そして欧州系の順で高いようです。
>塩分摂取量の多い日本の東北地方は血圧が高い人が多いことで知られていました。この他に、ネズミに食塩を大量に与えたらネズミが高血圧になったという報告があったことから、塩分のとりすぎが高血圧の原因らしいという「食塩仮説」が生まれました。
>じつは塩分だけでは説明できない
>血圧と塩分摂取量の関係について、1980年に興味深い調査が実施されました。その結果をまとめたのが図「血圧は塩分摂取量だけでは決まらない」です。これは世界各地に住む 50 代男性の収縮期血圧の平均と、それぞれの塩分摂取量の関係を見たもので、ここに現代の日本人の数値を星印で書き加えてあります。
>これを見ると、確かにブラジルの先住民 (北方、ヤノマミ)は、塩をほとんど摂取せず、血圧が非常に低いことがわかります。しかし、やはり塩分の摂取量がほぼゼロの ニューギニア(高地)の人たちは、現代の日本人と血圧が大差ありません。また、西インド諸島や英国(南ウェールズ)は、塩分摂取量が日本と同じか、もっと少ないのに、血圧が明らかに高いのです。
<図2>
塩分摂取量vs血圧
>これに続いて、「インターソルト・スタディ」という世界規模の調査が1988年から実施されました。すると驚いたことに、減塩しても必ずしも血圧が下がるとは限らないこと、そして血圧は、むしろアルコールや肥満など、塩分以外の影響を強く受けることが示され、大きな反響を呼びました。*
*高血圧の遺伝的素因は東アジア人と欧州系で異なる:Takeuchi F. et al. ,“ Interethnic analyses of blood pressure loci in populations of East Asian and European descent.”, Nat. Commun. , 9( 2018)
>じつは、このことは日本の東北地方での調査からもわかっていました。
>東北地方でも、高血圧患者数に大きな違いがあった
>東北地方、とくに秋田県は脳出血による死亡率が高く、長年にわたって対策を進めてきました。そのため膨大な研究データの蓄積があります。1950年代の初めには、秋田県の農村は高血圧患者さんの割合が60%にのぼり、これとは対照的に脳出血が少なかった岩手県の漁村は20%だったと報告されています。その差、なんと3倍です。
>この二つの地域を比較したところ、冬になると厳しく冷え込むのは同じでも、生活習慣に大きな違いがあることがわかりました。
>脳出血が多い農村の人は、冬は雪に閉ざされて新鮮な野菜や魚が手に入らないので、塩味の強い漬物や干し魚を食べていました。米どころであったことから、どぶろく造りが盛んで、屋内でお酒を酌み交わしながら静かに春を待つのが常でした。
>その一方、脳出血が少ない漁村の人たちは、海藻や野菜、そして新鮮な魚を多く食べる一方で、米が不足しがちだったためにあまり飲酒をせず、冬も漁に出て体を動かしていたのです。 新鮮な魚は質のよい動物性蛋白質を含んでいます。蛋白質は血管を丈夫にし、とくに動物性蛋白質に豊富な含硫(がんりゅう)アミノ酸という成分は、交感神経の興奮をしずめて血圧を下げてくれます。
>そのため秋田県全域で、減塩指導とともに、魚や肉に含まれる動物性蛋白質の摂取をすすめ、必要に応じて血圧を下げる薬を使用したところ、脳出血による死亡が激減しました。**
**秋田県における脳血管障害対策のあゆみ:由利組合総合病院、『秋田の脳卒中 脳卒中発症登録でわかること 1950年代から2010年までの実態、危険因子と予防』(2013)
>危険と紙一重の、動物性蛋白質
>日本全体の食生活にも同じ変化が起きています。
>図「動物性蛋白質は大事だが、とりすぎに要注意」のグラフからわかるように、日本人は長年にわたって豆や豆腐などの大豆製品、そして米、野菜に含まれる植物性蛋白質を中心に摂取してきました。それが次第に動物性蛋白質の摂取が増え、近年では動物性蛋白質が少々過剰になっています。
<図3>
蛋白質摂取量
>また、肉に多く含まれる飽和脂肪酸という成分にも血管を丈夫にする効果があります。これを受けて現地で食事指導をおこなうとともに、その後に広がった食の欧米化の影響もあって脳出血は順調に減少しました。厚生労働省の2022年の統計によれば、脳出血による国民全体の死亡率は1950〜1960年の4分の1程度になっています。
>ただし、動物性食品の摂取を増やすのは危険と紙一重。とくに肉は内臓脂肪を増やし、糖尿病、心筋梗塞、脳梗塞、そして一部のがんの発症率を高めます。
>現代では日本人のほとんどが動物性食品を十分に摂取できているため、これ以上増やさないでください。植物性食品である大豆も血圧の上昇を抑えます。納豆、味噌など、発酵させた大豆製品を最も多く摂取しているグループは、摂取量が最も少ないグループとくらべて高血圧の発症率が約30%低いという結果が得られています。
>さらに、食塩感受性についても興味深いことがわかってきました。
>医学博士 奥田 昌子
京都大学大学院医学研究科修了。内科医。京都大学博士(医学)。医学部卒業後、博士課程に進み基礎研究に従事。生命とは何か、健康とは何かを考えるなかで予防医学の理念にひかれ、健診ならびに人間ドック実施機関で30万人近くの診察/診療にあたる。海外医学文献と医学書の翻訳もおこなってきた。現在は産業医を兼務し、ストレス対応を含む総合診療を続けている。愛知県出身。著書に『最新 欧米人とはこんなに違った 日本人の「体質」』(講談社ブルーバックス)、『内臓脂肪を最速で落とす』(幻冬舎新書)など多数。
<参考=「塩分摂取だけでは説明できない…東北地方で軒並み高かった脳出血の死亡率。じつは、「秋田県と岩手県で、高血圧患者数に3倍もの違い」があった」(現代ビジネス)>
(26/04/14)
https://gendai.media/articles/-/165094